雑記2

 でっかい......。アゲハチョウの芋虫。三齢幼虫辺りのそれが、道路を横切り這っていた。蠕動運動をする柔らかな筒状のタンパク質。この秋に産まれたところで番になれずに死んでしまうのではないかと思われるのに、冷え始めた重油由来の路面に重い体脂肪を引き摺りながら歩いている。からだの内側の黄緑色したエキゾチックな体液や体組織を、これまた鼻水のごとく鮮やかな黄緑色と黒色の目玉のコントラストが彩る。多少は丈夫な皮袋で包まれてパンパンだ。肥った体をグロテスクに撓ませて決死で這う一つの生命らしきもの。
(2018/11/5)



 とにかく詞藻がたくさんあって、
 思い付く度朗読するのだが、
 結局どれも書ききる前に消えてしまう
 人の死をもって、その仮面を食することで血肉を得る少女などの話
 私のことをわかってくれない 雨の日の自転車や救急車
 屋上で飛び降りた少女
 盲目である女の子と、それと楽しげに付き合うもう一人の子の話
 南総里見八犬伝や、奥州の
 美術館の画集 二つの蓮の 
 漢詩文調の
 文化祭のTシャツや部屋―はしごの上の狭い狭い着替え
 中学のおろかな同級生と、それを探す嫌な人たち 去り際に教えて
 最後に献本の前書き
 あんなに完成した詩文が三つあったのに
 仮面が二つと、そのpreface
 今や書き出しすら思い出せぬ
 朗読は宙空に解け
 私の石膏
 いいえ、布と紙粘土の仮面にはえ書ききらで
 ケータイにも本の中表紙にも書こうとしたけど終わらなくて
 夢から醒めた今など、欠片も覚えてはいない
 屋上から飛び降りて死んだ女の子
 仮面の
 その気持ちがお前にわかるか!
 血腥い 仮面 食してまさにそのものになった
 雨の日の自転車 私は理解されず
 それを叫ぶと隊員は困った顔をして
 仕方なく車にのせるのだった
 ああ、あの詩
 私にそれを残してくださらない?
 そうすれば私
 死んでも構いませんでしたわ

 Martinのdoppel missa Benedictusが夢に幕を下ろして
 協和音こそが音楽の感動なのだと
 少しだけわかった気がしたのです
(2018/11/17)


 見えぬ旭日

 未明 煌々と望月 朧に夜空
 雲 芒の原 影に かげ零る
 肩低く 鈍の鍍金の隙 薄青の曙
 警戒の色強め 人頭の影に怯え
 上るばかり 沈むばかり 
 事なく 始め また終るのみ
(2018/11/24)


 好かれたら
 嫌われたくなる
 嫌われたら?
 狂おしいほど
(2018/12/3)