詩にならない

 午後一時の太陽 は
 こんなにもきいろかったのだろうか
 蜂蜜色の光が壁にかかった布団を舐めて
 遠くの空は春のように霞んで
 思ったより低い陽光に僕は目を細めて
 肌に感じる涼しげな空気だけは
 冬


 多くの人々は屋内で仕事をしている
 女の人が外を出歩いて買い物をしている
 男の人は駅から家に急いでいる
 若者は学校をはや抜けして自慢げに町を歩く
 老いた人たちが痛む股の関節を労う
 虚しい心を埋めるように幼子の手を引いて歩く
 ボアやダウンやフェルトやポリエステルのこの人たちの外套も
 冬


 パン屋の匂いは近づかなければそれとわからない
 鼻腔に触れる微風にはなんの色もついていない
 ふわっと香る後れ毛や洋服その柔軟剤の匂い
 みな冷たい空気が阻んでしまうみたいで
 枯れ葉の土の香ももう遠くの春を忘れた
 ただこの日だけこの日の世界を満たしていて
 冬


 黄色い太陽
 黄金色のきらきらした液体
 麦のお酒 おしっこ それとも耀く未来の曙
 よく知らないのに今日の日は冬 冬の中の
 とろとろとした光のなみ
 きんいろの人たち

 今日だけは
 大勢の
 一人の町