雑記3

 汗と小便の臭い
 電車のなか
 生ぬるい空気
 元気を挑発する
 広告
 色彩
 あたらしいモニター
 そこに群がる
 人々


 足のすくむ恐怖
 は
 確かにあった
 世界には
 例えば台風の夜の風
 ジェットコースター
 暴力的な波濤
 三メートル先のほんものの銃口
 出来ない仕事
 「あんたいい加減にしなよ」みんな
 足下の崩れる恐怖だ
(2018/10/2)


 上に雲
 遠くに太陽の名残
 空の向こうに光の名残
 夜のこちらに青色は残り
 平和な天の民の光
 上に雲
 圧し潰すような鉛の雲 しかし
 晴れてぬけぬけと 鮮やかに
 吸い込まれるような淡青
 薄暮
(2018/10/12)



 この世の黄昏にいる気分になる
 僕一人だけが
 この湯気の立ち込める浴室に
 世界の斜陽を浴びた気分になる
 僕一人だけが
 事を致したこのワンルーム
 もはや先行きなどない気分になる
 僕一人だけが
 みなも道連れにして
 世界よ
 この平成の半ば
 失われた時代にあるものと
 VHSの掠れをあくがれて見る
 世界は常夏の蝉と
 よもや世は事もなしと知らない
 第五屠殺場の外
 市場から離れてなどいないが
 この社会的な窓の内側にて
 大学もプーさんも老人も消防車もある
 この地からガラス一枚隔てただけ
 現代工法により建てられた綺麗なアパートで
 僕一人だけが
 隔絶する
 そんな時代
 過ぎた時代を夢見ながら

 僕達は 
 軽々しい宇宙
 避けることできず住まっている
(2018/12/13)